会計

【会計調査レポート】国内化学メーカーの財務安全性を比較|自己資本比率とネットD/Eレシオで見る安定度

こんにちは。
「ツキを呼ぶサラリーマン家計研究室」運営者の運雄新記(うんゆうしんき)です。

これまでのシリーズで「売上」「費用」「利益」を見てきました。
今回はその最終章、第4弾として、企業の財務の健全性を測る「自己資本比率」と「ネットD/Eレシオ」を分析します。

💡 自己資本比率とは?財務の“体力”を表す指標

企業は、**自己資本(株主からの出資+内部留保)他人資本(借入金や社債など)**によって運営されています。
そのうち自己資本がどの程度を占めるかを示すのが、自己資本比率です。

自己資本比率(%)= 自己資本 ÷ 総資産 × 100

この比率が高いほど、外部資金に依存せず経営していることを意味します。
つまり、財務の安定性が高く、倒産リスクが低い企業といえるのです。

✅ 自己資本比率が高い企業のメリット

  • 資金調達力が高い:銀行から有利な条件で融資を受けやすい

  • 信用力が高い:取引先や投資家からの信頼度アップ

  • 経営の安定性:景気変動や不測の事態に強い

📊 国内化学メーカー 自己資本比率ランキング(2023年度)

略号 資産合計(百万円) 自己資本(百万円) 自己資本比率
F 5,147,974 4,257,922 82.7%
B 4,783,460 3,169,247 66.3%
L 1,289,949 794,516 61.6%
K 1,323,243 792,329 59.9%
H* 1,769,746 983,658 55.6%
D 3,466,518 1,736,034 50.1%
I* 2,713,341 1,358,310 50.1%
C 3,662,730 1,813,391 49.5%
G 2,215,819 862,851 38.9%
A 6,104,513 1,763,447 28.9%
J* 2,031,953 552,838 27.2%
E 3,934,818 965,753 24.5%

*印:12月期決算

💬 考察:業界平均は49.6%、F社は突出した安定性

  • 12社平均の自己資本比率は 49.6%

  • F社(82.7%) は圧倒的に高く、実質的に無借金に近い極めて堅実な財務体質。

  • 一方で、A社・E社・J社は30%未満で、外部資金への依存度がやや高めです。

⚖️ 自己資本と負債の違いを整理しよう

区分 自己資本 負債
資金源 株主の出資、内部留保 借入金、社債など
返済義務 なし あり
リスク 低い 高い

自己資本は返済不要の「安定資金」、負債は返済が必要な「リスク資金」です。
企業が成長するためには両者のバランスが重要です。

💰 ネットD/Eレシオとは?実質的な負債依存度を測る

ネットD/Eレシオ(倍)= 純有利子負債 ÷ 純資産

ここで、

  • 純有利子負債=有利子負債(短期+長期借入金・社債)-現預金

ネットD/Eレシオが1倍未満なら健全、0以下(マイナス)なら実質的に無借金経営です。

📈 国内化学メーカー ネットD/Eレシオランキング(2023年度)

略号 現金等(百万円) 有利子負債(百万円) 純有利子負債(百万円) ネットD/Eレシオ
H* 291,663 138,480 -153,183 -0.16
F 1,698,999 24,299 -1,674,700 -0.13
K 138,572 57,839 -80,733 -0.09
L 149,812 176,335 26,523 0.03
B 179,715 502,819 323,104 0.10
C 338,108 604,017 265,909 0.15
I* 289,647 739,766 450,119 0.33
D 235,887 910,404 674,517 0.39
G 210,292 756,758 546,466 0.63
J* 190,318 678,329 488,011 0.88
A 294,924 2,201,011 1,906,087 1.08
E 217,449 1,563,486 1,346,037 1.39

*印:12月期決算

💬 考察:平均0.39倍、上位3社は実質“無借金経営”

  • 平均ネットD/Eレシオは 0.39倍

  • H社・F社・K社はマイナス値となり、現金資産>有利子負債の極めて健全な財務構造。

  • A社・E社は1倍超で、やや借入依存が高い構造。成長投資や海外展開の影響が推測されます。

🧾 まとめ:安定経営の鍵は「バランス」

指標 理想値 意味
自己資本比率 50%以上 財務の安定性・信用力の高さ
ネットD/Eレシオ 1.0倍以下 借入依存が低く健全な経営

総じて、日本の化学メーカーは堅実な財務運営を維持しており、特に上位企業はグローバルな不確実性にも強い体質を持っています。

📘 次回予告

次回はシリーズ第5弾として、「時価総額」をテーマに取り上げます。
市場からどのように評価されているのか──企業価値の観点から分析を行います。

🖋️ 運雄新記よりひとこと

私は26年以上、化学業界の現場で数字を追いかけてきました。
売上や利益は“結果”ですが、自己資本比率は「信頼の積み重ね」です。

堅実な財務体質こそが、長期的にツキ(運)を呼ぶ経営につながります。

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