会計

【会計調査レポート】国内化学メーカーの費用構造を比較|原価率・販管費率で見る“コスト競争力”

こんにちは。
「ツキを呼ぶサラリーマン家計研究室」運営者の**運雄新記(うんゆうしんき)**です。

前回の記事では、国内化学メーカー12社の**売上ランキング(2024年3月期)を比較しました。
今回はその続編として、各社の
費用構造(原価率・販管費率)**を分析します。

📊 前回の売上ランキングはこちら

💡 会計の基本:利益は「売上-費用」で決まる

企業の利益は、シンプルな式で表せます。

利益 = 売上 - 費用

したがって、利益を増やすには
① 売上を伸ばす、または
② 費用(コスト)を削減する
この2つの方向しかありません。

売上を伸ばすには「販売量の拡大」や「単価アップ」が必要です。
一方で、費用を減らすには「原価率」と「販管費率」を分析し、効率化の余地を見つけることが重要です。

今回は、各社の決算短信に掲載された「売上原価」「販売費及び一般管理費(販管費)」をもとに、コスト構造を数値化しました。

⚙️ 原価率の低い会社は“高付加価値型”

「原価率」とは、売上に対してどの程度の原価がかかっているかを示す指標です。

原価率(%)= 売上原価 ÷ 売上高 × 100

原価率が低いほど、「効率的な製造」や「高い付加価値」を実現しているといえます。

🔽 国内化学メーカー 原価率ランキング(2023年度)

略号 売上(百万円) 売上原価(百万円) 原価率
B 2,960,916 1,774,656 59.9%
I* 1,442,574 866,449 60.1%
F 2,414,937 1,503,728 62.3%
H* 1,532,579 972,152 63.4%
K 1,256,538 864,343 68.8%
C 2,784,878 1,968,909 70.7%
A 4,387,218 3,240,394 73.9%
L 1,005,640 779,414 77.5%
G 1,749,743 1,378,946 78.8%
E 2,446,893 1,947,198 79.6%
J* 1,288,869 1,042,252 80.9%
D 2,464,596 2,021,073 82.0%

*印:12月期決算企業

🏭 原価率の低い企業に共通する特徴

  1. 立地優位性:原料調達コストが低い地域に生産拠点を設置

  2. 大量生産効果:大規模な生産ラインによるスケールメリット

  3. 技術力の高さ:他社には真似できない独自技術で高付加価値化

特にB社・I社・F社は、効率的な生産体制に加え、研究開発力の高さも見逃せません。

💼 販管費率の低い会社は“スリム経営型”

「販管費率」は、売上に対して販売・管理コストがどれくらいかかっているかを示す指標です。

販管費率(%)= 販管費 ÷ 売上高 × 100

低いほど、少人数・効率的な組織運営が行われていると考えられます。

🔽 国内化学メーカー 販管費率ランキング(2023年度)

略号 売上(百万円) 販管費(百万円) 販管費率
F 2,414,937 210,171 8.7%
D 2,464,596 346,344 14.1%
L 1,005,640 146,379 14.6%
G 1,749,743 282,657 16.2%
J* 1,288,869 250,380 19.4%
A 4,387,218 932,345 21.3%
K 1,256,538 297,795 23.7%
C 2,784,878 675,223 24.2%
B 2,960,916 752,427 25.4%
I* 1,442,574 420,247 29.1%
H* 1,532,579 466,770 30.5%
E 2,446,893 887,124 36.3%

*印:12月期決算企業


🧠 F社の特徴に見る「販管費最適化のヒント」

F社の販管費率は8.7%と、他社と比べて圧倒的に低水準。
その要因として、以下の2点が挙げられます。

  1. 少数精鋭の組織体制:採用人数を最小限に抑え、1人あたりの業務範囲を広く設定

  2. BtoB特化による広告費削減:一般消費者向けではなくメーカー向け販売に集中し、宣伝広告費を最小化

まさに「スリムで効率的な経営」の好例といえます。

📘 用語解説

用語 意味
売上原価 製品を作る・仕入れるのに直接かかった費用。
売上総利益(粗利) 売上-売上原価で算出される“儲けの基礎”。
原価率(%) 売上原価 ÷ 売上高 × 100
販管費 販売活動・管理活動にかかる費用(人件費・研究費・広告費など)。
販管費率(%) 販管費 ÷ 売上高 × 100
営業利益 売上-売上原価-販管費。企業の本業のもうけ。
営業利益率(%) 営業利益 ÷ 売上高 × 100

🔍 まとめと次回予告

今回は、国内化学メーカー12社の**コスト構造(原価率・販管費率)**を比較しました。
費用を抑えつつ高い付加価値を出す企業が、強い利益体質を持っていることが分かります。

📈 次回の第3弾では…

各社の「営業利益率」を比較し、“最も儲かっている会社”を明らかにします!

🖋️ 運雄新記よりひとこと

私は農薬・肥料業界で26年以上、製造・営業・品質管理・会計の現場を経験してきました。
実際のデータに基づいて「企業の強さ」を見抜くことで、
会社員としての視野が広がり、仕事にも“ツキ”を呼び込めます。

次回もどうぞお楽しみに。

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